
三宅香帆さん著『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』を読みました。
本書は、アイドルや宝塚を愛してやまない著者が、書評家として培った「感想を言葉にする技術」を惜しみなくまとめた1冊。
SNSやブログ、ファンレター、音声配信など、さまざまな発信の場で、自分の感情を“自分だけの言葉”で伝えるコツが丁寧に紹介されています。
特に印象的だったのは、第1章のタイトル——「推しを語ることは、人生を語ること」。
最初にこの見出しを目にしたとき、「えっ? 推し語りって自分語りなの?」と驚きました。
でも読み進めるうちに、その言葉の意味がじんわりと腑に落ちてきたんです。
私はもともと、「好き!」という気持ちをうまく言葉にできないタイプで、感動しても「やばい!」「尊い!」の一言で終わってしまうことが多くて…。
だからこそ、サブタイトルに深く共感し、「これはまさに私のための本かも」と思って手に取りました。
感情を言葉にする“ちょっとしたコツ”
本書で紹介されているテクニックの中でも特に参考になったのが、感想の整理方法。
たとえば、ライブを観たあとの気持ちをどう言語化するか。まずは**「ポジティブ or ネガティブ」**で分けて、さらに
- ポジティブ → 「共感」or「驚き」
- ネガティブ → 「不快」or「退屈」
と、感情を細かく分類していくことで、自分の中にある感動や違和感の“輪郭”がはっきりしてくるんです。
また、三宅さんが紹介する「言葉にするコツ」もシンプルで実践しやすいものばかり。
コツ① 自分の感情を一番大切にする
コツ② 妄想をこねくり回して、感想を生みだす
コツ③ よかったところを細分化するだけで、あなただけの言葉になる
これらのヒントのおかげで、言葉に詰まってしまう場面でも「ちょっと落ち着いて分解してみよう」と思えるようになりました。
本を読んでからのちょっとした変化
この本をきっかけに、今まであまり意識していなかった「書評」にも興味が湧きました。
最近は、日曜日の読売新聞の書評欄を読むのがちょっとした習慣になっています。
どんな書き出しだと気持ちをつかまれるのか、どんな語り口だとその本を読みたくなるのか——そんな視点で読むのが楽しいです。
また、三宅香帆さんご本人が出演されているYouTubeもいくつか拝見しました。
「本を読むのが楽しい!」「本屋さんって宝の山!」という明るい語りに影響されて、ふらっと本屋さんの新書コーナーに立ち寄ってみたり。
そこには、今まで知らなかった面白そうな世界が広がっていて、ワクワクしました。
「うまく言葉にできないけど、推しの素晴らしさをちゃんと伝えたい」。
そんな気持ちを持っているすべての人に、本当におすすめしたい1冊です。
特別な文才や語彙力は必要ありません。
ほんの少しの“コツ”を知るだけで、自分の感動を、誰かに伝えたくなる言葉に変えられる。
そんな力をくれる本でした。
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